診療案内・科目

肺腫瘍

概要

写真1.黄色点線で囲まれた部分が肺腫瘤

写真2.肺腫瘍により肺性肥大性骨症を起こしている症例の前肢

犬の原発性肺腫瘍は転移性肺腫瘍に比べて発生は稀であり、猫の原発性肺腫瘍はさらに稀と言われています。
原因として都会的生活や受動喫煙が肺腫瘍の発生率と関連があると言われてはいるものの確実な疫学的根拠は未だ示されていません。
犬猫ともに高齢(平均10歳齢)で発生し、性別や犬種・猫種で特異性はありません。

犬猫の原発性肺腫瘍のほとんどは悪性であり、最も一般的なのは肺腺癌です。
犬の原発性肺腺癌は多くは孤立性であり、転移は比較的稀です(写真1)。転移部位として、典型的には気管-気管支リンパ節や別の肺葉に起こります。
また、非常に稀に、腫瘍随伴症候群として肺性肥大性骨症を起こし、四肢に痛みを示す場合があります(写真2)。

間質細胞腫の多くは1cm以下の結節性の病変であり臨床的に問題とされていない精巣において偶発的に発見されることが多い腫瘍です。
高エストロゲン血症に伴う症状はセルトリ細胞腫やセミノーマに比べると少なく、転移することは極めて稀です。

写真3.肺腫瘍が転移した猫の前肢(肺-指症候群)

一方、猫の肺腺癌は、診断時に75%以上が転移していたと言う報告があり、診断時にはすでに複数の肺葉に多発していることが多いです。
転移部位としては犬と同様に、一般的には気管-気管支リンパ節と別の肺葉です。
稀ではありますが、肢骨(指先)に転移する肺-指症候群が認められることもあります(写真3)。

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診断

写真4.CT検査 黄色点線で囲んだ部分が左の後葉に発生した肺腫瘍

犬猫の場合、無症状のことも多く、健康診断などで胸部レントゲン検査を撮影した際に偶発的に発見することがあります。
症状を認める場合には、数週〜数ヶ月にわたる咳、運動不耐性などの呼吸器症状を示します。時に、胸水が貯まり緊急的処置が必要な呼吸困難を示すこともあります。

通常、胸部レントゲン検査を行い、肺に腫瘤陰影が認められた場合、転移性のものでないかを鑑別します。
過去に悪性の腫瘍を切除した経験はないか問診し、血液検査や腹部超音波検査等の全身スクリーニング検査をおこなって肺以外に腫瘍がないことを確認します。
次に、CT検査を実施し、切除可能かどうか、リンパ節転移の可能性があるかどうかの判断をします(写真4)。

肺腫瘍が多発していたり、典型的でない場合には肺の細胞診または生検を実施することもありますが、一般的に孤立性の病変であったり、生検が困難な部位では実施していません。

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治療

犬猫ともに、孤立性の肺腫瘍の場合、外科切除が第一選択です。
非常に腫瘍が小型で辺縁に限局している場合には肺葉の部分切除を行いますが、一般的には、その腫瘍が存在している肺葉を一塊に切除する肺葉切除をおこないます。手術手技には、肋間開胸術、胸骨正中切開術、鏡腔胸下によるものがありますが、肋間開胸術が一般的です。

化学療法や放射線療法は、単独ではほとんど適応されていません。ビノレルビンを補助的化学療法として使用し、一部に効果が示されています。
また、癌性胸膜炎(胸水貯留)に対しては、シスプラチン、カルボプラチン、ミトキサントロンを用いた全身療法、胸腔内注入または両者の併用療法をおこないます。

猫に関して、化学療法や放射線療法のまとまった報告はなく、有効な治療法は確率されていません。

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予後

犬では、腫瘍のサイズ、組織学的悪性度(Grade)、リンパ節転移の有無が予後に大きく影響します(表-1)。最も予後が良いのは直径5cm以下の孤立性病変でリンパ節転移がなく、癌性胸膜炎による胸水貯留がなく、よく分化した腺癌です。

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表1

腺癌 予後因子 中央生存期間
組織学的Grade
高分化 790日
中等度 251日
未分化 5日
リンパ節転移あり 26 – 126日
診断時の臨床兆候
症状なし(偶発) 545日
症状あり 240日
腫瘍サイズ
<5cm 20ヶ月
>5cm 8ヶ月

猫では、臨床症状の有無、リンパ節腫大の有無、腫瘍の組織学的悪性度が予後に大きく影響すると言われていますが、症例が少なく、まとまった報告は出ていません。
ある報告では、リンパ節の腫大なし:中央生存期間467日に対して、リンパ節腫大あり:中央生存期間 2.5日だったとあります。また、組織学的悪性度が低〜中等度では、中央生存期間730日、高悪性度では中央生存期間が105日との報告があります。


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