診療案内・科目

肝臓・胆管腫瘍

概要

肝臓・胆管の腫瘍は、肝臓・胆管が由来の「原発性肝臓・胆管腫瘍」と他臓器で発生した悪性腫瘍が転移した「転移性肝臓腫瘍」に大きく分かれます。
転移性肝臓腫瘍は全て悪性腫瘍であり、一般的に予後は不良です。原発性肝臓・胆管腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍にさらに分類されます。

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原発性肝臓・胆管腫瘍

原発性肝臓・胆管腫瘍はまれであり、転移性の方がより一般的で、2.5倍の発生率があります。

原発性悪性腫瘍の組織学的カテゴリーは肝細胞由来、胆管由来、神経内分泌由来(またはカルチノイド)、間葉由来(肉腫)の4つに分類されます。
また、形態学的には、塊状型、結節型、浸潤型の3つのタイプに分類されます。組織学的カテゴリー中での形態学的タイプの発生率を表−1に示します。

表−1

塊状型 結節型 浸潤型
肝細胞癌 53−84% 16−25% 0−19%
胆管癌 37−46% 0−21% 17−54%
カルチノイド 0% 33% 67%
肉腫 36% 64% 0%

写真1.塊状型の大きな腫瘤が存在
(黄色丸で囲んだ部分が腫瘍)

写真2.結節状の腫瘤が存在(黄色矢印)

写真3.浸潤型 び漫性に白色腫瘤が多数存在

塊状型の肝臓腫瘍は単一の肝葉に限局し、大型で孤立性の腫瘤です(写真1)。結節型は多病巣性で、複数の肝葉の腫瘤です(写真2)。
浸潤型は多発性の病巣や全ての肝葉で連結した結節性病巣など、腫瘍性疾患の最終過程の場合もあります(写真3)。

肝臓腫瘍の予後は組織学的カテゴリーと形態学的タイプにより決定します。
ここでは、原発性肝臓・胆管腫瘍のうち犬で最も発生が多く、猫でも2番目に発生の多い『肝細胞癌』について詳細を説明します。

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肝細胞癌

概要

肝細胞癌は組織学的カテゴリーのうち肝細胞由来の腫瘍です。肝細胞由来の腫瘍には肝細胞癌、肝細胞腺腫、肝芽細胞腫があります。
肝芽細胞腫は非常に稀であり、犬では1例の報告のみです。肝細胞腺腫は良性腫瘍であり通常、偶発的に発見され臨床徴候を伴うのは稀です。但し、巨大化し、腫瘍破裂を起こす可能性は十分にあります。

犬において肝細胞癌は最も発生率が高く、約50%を占めます。肝細胞癌は悪性腫瘍に分類されますが、形態学的タイプにより転移率は大きく異なります。
塊状型肝細胞癌では転移率は低く、0−37%と言われていますが、結節型や浸潤型肝細胞癌では93−100%と言われています。転移部位としては、領域リンパ節、肺、肝内、腹膜等が挙げられます。

診断

肝細胞癌に関わらず、肝臓腫瘍の症状は非特異的です。
食欲不振、体重減少、嗜眠、嘔吐、多飲多尿、腹水(腹囲膨満)等が一般的ですが、重度の場合、黄疸、肝性脳症による発作も認められます。また、無症状で健康診断などで偶発的に発見されることもあります。

肝臓腫瘍は転移性であることが多いため、全身のスクリーニング検査(血液検査、胸部レントゲン検査、腹部超音波検査等)が必要です。
血液検査では、白血球数増多症、貧血、血小板減少、肝数値(GPT,GOT,ALP)上昇が一般的ですが、何も異常を示さないこともあります。
腹部超音波検査は肝臓の腫瘤を発見するには非常に有用ですが、腫瘤が巨大な場合、重要な血管との関係性や他臓器への浸潤が明確には分かりません。
さらに詳細に形態学的タイプ、発生部位、重要な器官との関係性(主に、重要な血管や胆管)を把握するためにCT検査を必ず実施し、手術可能か評価します。

治療

肝細胞癌は、形態学的に塊状型の場合、非常に大型の腫瘤を形成しますが、比較的進行が遅く転移率も低いため外科手術による肝葉切除が第一選択です。
また、結節型や浸潤型の場合でも、腫瘍破裂が起きている場合や腫瘍によりQOL(Quolity of life ; 生活の質)が著しく低下している場合には、緩和的な減容積のために肝葉切除やIR(Interventional Radiology)を用いた動脈塞栓や動注化学療法等を推奨しています。

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予後

予後は肝臓腫瘍の種類や形態学的タイプにより大きく異なります。

<肝細胞癌>

犬の塊状型肝細胞癌に対し外科手術(肝葉切除)を行なった報告では、術後大部分の患者が生存(1460日以上)しており生存期間中央値が算出できていないと報告があります。
それとは対称的に外科手術をしていない患者の生存期間中央値は270日と有意に短いことが分かっています。つまり、塊状型の肝細胞癌は切除により多くの場合、予後は良好です。

結節型または浸潤型肝細胞癌の予後は不良です。たいていの場合、これらは複数の肝葉に多発性に存在するため、外科切除が不可能です。

<胆管腫瘍>

犬・猫の塊状型胆管癌に対しては肝葉切除が推奨されていますが、外科切除後に局所再発や転移によりほとんどが6ヶ月以内に亡くなるため生存期間は短いです。結節型、浸潤型の胆管癌では外科切除は適応外であり、その他の効果的治療は知られていないため、予後は不良です。

<神経内分泌腫瘍(カルチノイド)>

カルチノイドは侵襲的な腫瘍であるため、孤立性や塊状型の病変は稀であり、外科切除は通常適応されません。犬では、早期にリンパ節や腹膜、肺に93%の確率で転移することから、予後は不良です。

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